ツンデレラは王子の夢を見る



「―…桐谷、おはよ!」



朝から、颯爽と登場する自分の彼氏。


“自分の彼氏”という表現も恐れ多く感じてしまいます。



「……お、はよ」


「古典の宿題やったー?」


「……一応は」


「さすが桐谷!えらいなー」




(………うぅ、)



麻尋には、彼が眩しい存在に見えて目がチカチカしました。


こんなにキラキラして見えるのは惚れた弱みというやつなのでしょうか。




「ゆずるー!」


「おっはよーう♪」


「おう、おはよ」


「古典の宿題したー?」


「オレ、現代かな遣いで生きていけるから」


「あはは、バカー(笑)」




(……あぁぁぁあ…!)



麻尋が譲に見とれている間に、彼は他の女子に持っていかれてしまいました。




(…それ、私の彼氏ー!)



がくりと麻尋の肩から力が抜けました。


麻尋は、いつもこうなのです。



話したいと思っていても、タイミングが悪いのかいつも誰かに割り込まれてしまいます。




「お、まっひー!おはー♪」


「……梨々(りり)」




そんな場面に、空気も読まず乱入してきたのが麻尋の中学からの友達の梨々でした。


今日もトレードマークである、明るい茶色の髪を高い位置でおだんごにしています。




「ん?まっひー、元気ないねぇ!私は朝ご飯がホットケーキで超ハッピーでしたー♪」


「(出た、梨々のウザいテンション!)…へぇ、」



もー!まっひー!と隣でうるさい梨々を、麻尋はもう無視することにしました。


梨々に1番効果的なのは、適度な無視。


やりすぎると泣き出してしまうのですが、今回も効果は覿面なようで、すぐにおとなしくなりました。




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