夜空に咲く、花。
ウー…
遠くでサイレンの音が聞こえる。
三尺玉の打ち上げの時に、必ず鳴るサイレン。
「とうとう、最後らねぇ」
「うん。そうだね…」
メインの花火を前に、二人は寂しそうに空を見上げる。
綺麗な線を描いて打ちあがってゆく三尺玉。
空の天辺まで辿り着きそうな勢いで、パァと花が開いた。
たった一つの花火が、空一杯に広がる。
ドオオオオン…
お腹の底に響く破裂音。
この音も三尺玉の醍醐味だってお父さんが言ってた。
この花火だけはすごく遠くで打ち上げているのに、どの花火よりも大きい花びらと音が皆を魅了する。