愛の終わりを奏でたい
アレンジ
『亜由美?』
4年前と変わらぬ恋人の声が、BGMのサックスと重なって耳にそっと流れ込む。
わたしはコーヒーカップを両手で包み、その残り僅かな液体を小さく揺らした。
『やっぱり、少し苦いかも』
溜め息のように、言った。
『無理すんなよ』
達也が優しく笑った。
『達也……今日……』
一瞬、躊躇する。
『今日のブレンドも、あの頃と同じ味がする?』
『え?』
不思議そうに達也がわたしの顔を見た。
「恋人と飲むブレンドは最高」4年前、達也はそう言って笑っていた。
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