愛の終わりを奏でたい
午後4時30分一一。
まだ、達也は来ない。
どこかホッとしている自分に気付いて、目を伏せた。
今日、達也が来なければいいのに一一。
そんな風にさえ思ってしまう、あの頃と違うわたし。
軽く唇を噛んて顔を上げた時、窓の外がぼんやり滲んで見えた。
『今日は、寒いですね』
マスターの低い声が響いた。
『こんなに寒いと、結露で窓が曇ってしまう』
わたしはいつのまにか結露に覆われていた窓ガラスを手で拭った。
知らずに溢れそうになった涙が落ちないように、雫で濡れた指をそっと瞼にあてる。
・