プライダル・リミット
 マキオは電車に乗り込むと、ふとリュウの行動を疑問に思った。なぜ13番線から?
(アパートがある下北沢に帰るために小田急線に乗り換えるのは合点がいく。だけど、三鷹方面の路線上でリュウが行きそうな場所といえばカフェ・レノンがある吉祥寺ぐらいしか思いつかない。吉祥寺から下北沢だったら京王井の頭線で1本だし、もし渋谷だとしても同じこと。それがなんでわざわざ新宿に……? 高円寺!? 高円寺から下北沢だったら乗換駅は新宿か吉祥寺だ。高円寺から吉祥寺までが4駅に対して、中央線なら新宿駅まで2駅。ゆえに新宿で乗り換える可能性は高い……。でもなんで高円寺なんかに? あの時もそうだった。初めてリュウと出会ったのも高円寺だった……。偶然? 今日だってリュウが高円寺にいたとは限らないし……むしろ高円寺にいたことの方が可能性は低いわけだし……)
 あくまでも仮定の話。それはマキオも重々承知だ。それにしても腑に落ちない。何かが引っ掛かる。そう、違和感。もう一つのパズル。その枠にはまだ1つのピースもはめ込まれていない。
 そんな憶測を張り巡らせているうちに電車は高円寺駅に到着した。車両の扉が開く。乗降客を確認して扉を閉めると、また電車は走り出した。マキオは車内にいた。足は高円寺で降りることをせず、心は吉祥寺に向かっていた。すべての謎を解く鍵はカフェ・レノンにあるはず……。
(今はあそこしかない……)


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