プライダル・リミット
 カフェ・レノンでマキオを待ち受けていたのは意外な人物だった。
“カランカラ~ン”
「いらっしゃあい」
 マダム?
「マキオちゃん、あちらの方がお待ちかねよ」
「えっ?」
 マキオはマダムが示す方に目をやると、こちらに向かって深々と頭を下げる男が一人。
 男はゆっくりと顔を上げた。
「先日は大変失礼なことを言ってすいませんでした」
 カズだ。
「マキオさんにお話したいことがあってお待ちしてました」
「はぁ……」
 いまいち状況を把握できていないマキオにマダムが口を挟む。
「なんかリュウちゃんのことで話があるみたいよ。そのためにカズちゃんはここのところ毎日のようにお店に来てたんだから。お店に来ればいつかはアナタに会えるんじゃないかって」
「リュウの……?」
 マキオはカズを見た。まっすぐにマキオを見つめるその真剣な眼差しは、どうやら本気のようだ。マキオは状況を把握した。願ってもない状況だ。
 “カナのパズル”に足りなかったピースの1つ目――カズの存在――リュウの過去に関係がありながら唯一カナの口から出てこなかった人物。




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