プライダル・リミット
2人は黙って同じテーブルに座った。カズはお冷を1口喉に通すと、静かに話し始めた。
「カナちゃんから聞いたそうですね、リュウさんのこと」
「う、うん。まあ」
マキオはカナから聞いたことをカズに話した。3人が幼馴染であること。リュウとショウがバンドを組んでいたこと。レイが事故に遭い、現在は施設で暮らしていること。
「リュウさんとショウさんがバンドを始めたのは高校3年の時でした。バンド名はslider’s gyro《スライダーズ・ジャイロ》。リュウさんがドラムでショウさんがボーカルとギター。それともう1人、他校の1コ下でベースのケイさん。当時はスリーピースっていうのと3人が共通して好きだったっていうのもあってニルバーナとグリーンデイのコピーバンドだったんスけど、それでも地元の高校じゃ知らない奴はいないくらいチョー有名で、ライブハウスはいつも満員の人気ぶり。3人のルックスもさることながら、もともと喧嘩上等で名を馳せていたような人達だったんスけどね。あの2人は無敵でした。マジ強かった。だから他校のヤツラにケンカ売られることもよくあって。ある日、いつものように他校のヤツラに呼び出されてその場所に行ってみるとナント! すでにそいつらが倒されていたんです! そこに立っていたのが返り血で制服と右手を赤く染めてベースを背負ったケイさん! さすがにこれには度肝抜かれましたよ! それで2人ともケイさんのこと気に入って。ちょうど2人でバンドやろうかって話してたところだったんでソッコー誘ってバンド結成。それにしても1人で8人スよ。8人! ケイさんマジハンパねぇ」
「……」
マキオは少し呆れながらも話を聴いていた。それは、いつ話が核心に触れるかわからないからに他ならない。しかし、それも望めないような気さえした。この1分ちょっとの話でカズの性格はなんとなくわかった。勝手にボルテージを上げて他人の事を自分の事のように話すわ誇張するわ。夢中になると周りが見えなくなるタイプ。「知りたいことはそんなことじゃない!」マキオは自ら核心に迫った。
「レイさんてどんな人なの?」
「……」
カズの一瞬の沈黙をマキオは見逃さなかった。と同時に“レイ”が核心であると確信した。
「カナちゃんから聞いたそうですね、リュウさんのこと」
「う、うん。まあ」
マキオはカナから聞いたことをカズに話した。3人が幼馴染であること。リュウとショウがバンドを組んでいたこと。レイが事故に遭い、現在は施設で暮らしていること。
「リュウさんとショウさんがバンドを始めたのは高校3年の時でした。バンド名はslider’s gyro《スライダーズ・ジャイロ》。リュウさんがドラムでショウさんがボーカルとギター。それともう1人、他校の1コ下でベースのケイさん。当時はスリーピースっていうのと3人が共通して好きだったっていうのもあってニルバーナとグリーンデイのコピーバンドだったんスけど、それでも地元の高校じゃ知らない奴はいないくらいチョー有名で、ライブハウスはいつも満員の人気ぶり。3人のルックスもさることながら、もともと喧嘩上等で名を馳せていたような人達だったんスけどね。あの2人は無敵でした。マジ強かった。だから他校のヤツラにケンカ売られることもよくあって。ある日、いつものように他校のヤツラに呼び出されてその場所に行ってみるとナント! すでにそいつらが倒されていたんです! そこに立っていたのが返り血で制服と右手を赤く染めてベースを背負ったケイさん! さすがにこれには度肝抜かれましたよ! それで2人ともケイさんのこと気に入って。ちょうど2人でバンドやろうかって話してたところだったんでソッコー誘ってバンド結成。それにしても1人で8人スよ。8人! ケイさんマジハンパねぇ」
「……」
マキオは少し呆れながらも話を聴いていた。それは、いつ話が核心に触れるかわからないからに他ならない。しかし、それも望めないような気さえした。この1分ちょっとの話でカズの性格はなんとなくわかった。勝手にボルテージを上げて他人の事を自分の事のように話すわ誇張するわ。夢中になると周りが見えなくなるタイプ。「知りたいことはそんなことじゃない!」マキオは自ら核心に迫った。
「レイさんてどんな人なの?」
「……」
カズの一瞬の沈黙をマキオは見逃さなかった。と同時に“レイ”が核心であると確信した。