プライダル・リミット
 真相から浮かび上がった次なる疑問――ショウの上京――マキオはすぐに質問を切り換えた。
「ちょっと待って。じゃあなんでショウさんは今東京に?」
「それは……」
「それは?」
「姉さんの夢だからです」
「夢?」
「施設で姉さんがショウさんに言ったんです。“今の自分の夢はまた二人が同じステージに立っている姿を観ることだ”って。ショウさんはその一言で上京することを決めました。僕は姉さんに〝自分が行けない代わりに2人を助けてあげてほしい〟と言われてショウさんについていくことにしたんです。姉さんの夢は僕の願いでもありますから……。もう4年も前の話ですけど……」
「4年? 大学は? 大学はどうしたの?」
「僕は高校を卒業して地元で就職したんですけど、上京するために辞めました。ショウさんは地元の大学から東京の大学に編入しました」
「編入? そこまでして!?」
「そうです。そこまでしてでもあの人には、リュウという男には魅力があるし、それだけショウさんにとって姉さんは特別な存在だったんです」
「なのにどうしてリュウとじゃなく別のバンドを?」
「それには僕も正直困惑してるんです。リュウさんとまた音楽やるために上京したはずなのに……。きっと、自分に素直になれないだけなんだと思うんです。プライドの高い人ですから。まだリュウさんのことを許せない部分もあるでしょうし、そのリュウさんに自分から声を掛けるなんて、あの人には……。プライドが邪魔してるだけなんです。 でも、姉さんの気持ちを考えると……。僕は何しに東京に来たんだ!」
「カズくん……」
 カズが見せた葛藤と憤り。マキオはそれを真摯に受け止めていた。





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