プライダル・リミット

奔走

 2009年3月13日(金)
 リュウのライブ当日、マキオは会場であるスタジオ・レノンに足を運んだ。レノンが視界に入ると、カフェの店内が暗いことに気がついた。
「あれ?」
 とうに日は暮れているというのに灯り一つ点いていない。玄関には“CLOSED”の表札。マキオは気になりながらもスタジオの階段を地下へ降りた。受付でマダムに渡されていたチケットを差し出すと、カウンター越しに男が声を掛けてきた。
「よく来たな。マキオちゃ、マキオ」
「マダ、マスター!?」
 相変わらずこの変貌振りは見慣れない。
「マスター、今日お店は?」
「店? ああ、閉めちゃった。臨時休業」
「閉めちゃった!?」
「なんてったって今日はリュウの晴れ舞台だ。それに、オモシロイものが見られるかもしれないしな。宿命に翻弄される若人。ん~青春だねぇ。コーヒー入れてるよりこっちの方がよっぽどエキサイティングだろ?」
「はぁ……」
 マスターはこぼれる笑みを抑えきれないといった感じで、これから何かが起こるかのような、今日のライブがその前触れであるかのような予見をしてみせた。“宿命”これもまたマスターに仕組まれた画策なのか、それともニューハーフの第6感なのか。マキオは確証を得ずとも「この人が一枚噛んでいることは間違いない」その思いは拭えなかった。
「それはそうと、カナとリンも来てるわよ。来てるぜ」
「リンちゃんが!?」
「ウフフ」
(キャラ定まってないじゃん)



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