プライダル・リミット
 ショウの前に姿を現したマキオ――
「リュウと……リュウとまたバンドやってあげて下さい」
「はあ? 何言ってんの? 俺にはモナートってバンドが……」
「お願いします!」
「おいおい、人の話聴けよ」
「レイさんの夢なんでしょ? そのために上京してきたんでしょ? レイさんの夢を叶えるために、リュウともう一度バンドやるために東京に来たんでしょ?」
「どうしてそれを……!?」
「カズくんから聞きました」
「あのバカ……」
「カズくん言ってました。“ショウさんはプライドが邪魔して素直になれないだけなんだ”って。“本当は今でもリュウさんとバンドやりたいんじゃないか”って」
「余計なことを……」
「余計なことなんかじゃない! カズくんはまた昔みたいに3人の仲が戻ってほしいって思ってるだけなんです! 3人が笑って会えることを願ってるだけなんです! それって3人の願いでもあるんじゃないんですか?」
「黙れ部外者。他人に何がわかる?」
「リュウを……リュウをレイさんに会わせてあげて下さい」
「話飛んでんぞ。だいたいテメェには何の関係も……」
「お願いします!」
「だから人の話聴けよ」
「リュウはまだレイさんのことが好きなんです! レイさんだってリュウのことが好きなんでしょ?」
「俺の前でズケズケと……」
「好きな人同士が一緒にいられないなんておかしいじゃないか!」
「まるでガキだな……思考が」
「だから……だからリュウとレイさんを!」
「聞けねぇな、そんな頼み。何度も言ってんだろ? 部外者が口出すことじゃねぇ」
「お願いします! お願いします! お願いします!」
 何度も懇願するマキオに背を向けて、ショウは立ち去った。
「くそったれ」




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