プライダル・リミット
2009年10月19日(月)
下北沢の街を歩いていたリュウの携帯電話が鳴る。着信メロディはボンジョヴィの“Livin’ On A Prayer”。画面には見覚えのない電話番号。
「はい」
「もしもし。藤真竜くんの携帯電話でよろしいですか?」
「そうですけど……」
「私、シッダールタ・レコーズの中路稔《なかじみのる》と申します。はじめまして」
「なかじみのる……? ってあの中路稔!?」
中路稔――音楽プロデューサー。通称ナカジ。バンドにこだわり、手掛けたアーティストは必ずヒットさせる。彼がプロデュースして売れなかったバンドはいない。今や彼のクレジットがあるだけで売れると言っても過言ではない。現在、日本の音楽業界に再びバンドブームを巻き起こそうとその構想を膨らませている。中路はリュウをボーカルとしたバンドを作ろうと考えていた。
「は、はじめまして! てかなんでナカジ、いや、中路さんが俺に!? えっ? 何? ドッキリ!?」
「君の“声”、聴かせてもらったよ」
リュウは以前このレコード会社にもデモテープを送っていたことを忘れていた。
「あっ! ありがとうございます!」
リュウは思い出した。あのテープにはバンド“4人の音”ではなく、自分“1人の音”しか入っていない。
「今度は生で聴かせてもらえないかな?」
「えっ? どういうことですか?」
「ウチのスタジオで君の歌を聴かせて欲しい」
「それって……俺1人でですか?」
「もちろんだよ。他に誰がいるんだい?」
「仲間がいます! 最高にクールな仲間が!」
「仲間?」
「はい! 実は俺、今バンドやってて……。それも周りの人達の助けとか支えとかがあったからこそで……そこにはいろんな人達の想いがあって……だから! だから今はみんなに俺達の音楽を聴いてもらいたいんです!」
「そうか……。わかった。でも他のメンバーが僕の目に留まるとは限らないよ」
「お言葉ですが、それはありませんよ。実際に観て頂ければわかります。俺達は4人で1つですから!」
リュウは自信満々に言い切った。
下北沢の街を歩いていたリュウの携帯電話が鳴る。着信メロディはボンジョヴィの“Livin’ On A Prayer”。画面には見覚えのない電話番号。
「はい」
「もしもし。藤真竜くんの携帯電話でよろしいですか?」
「そうですけど……」
「私、シッダールタ・レコーズの中路稔《なかじみのる》と申します。はじめまして」
「なかじみのる……? ってあの中路稔!?」
中路稔――音楽プロデューサー。通称ナカジ。バンドにこだわり、手掛けたアーティストは必ずヒットさせる。彼がプロデュースして売れなかったバンドはいない。今や彼のクレジットがあるだけで売れると言っても過言ではない。現在、日本の音楽業界に再びバンドブームを巻き起こそうとその構想を膨らませている。中路はリュウをボーカルとしたバンドを作ろうと考えていた。
「は、はじめまして! てかなんでナカジ、いや、中路さんが俺に!? えっ? 何? ドッキリ!?」
「君の“声”、聴かせてもらったよ」
リュウは以前このレコード会社にもデモテープを送っていたことを忘れていた。
「あっ! ありがとうございます!」
リュウは思い出した。あのテープにはバンド“4人の音”ではなく、自分“1人の音”しか入っていない。
「今度は生で聴かせてもらえないかな?」
「えっ? どういうことですか?」
「ウチのスタジオで君の歌を聴かせて欲しい」
「それって……俺1人でですか?」
「もちろんだよ。他に誰がいるんだい?」
「仲間がいます! 最高にクールな仲間が!」
「仲間?」
「はい! 実は俺、今バンドやってて……。それも周りの人達の助けとか支えとかがあったからこそで……そこにはいろんな人達の想いがあって……だから! だから今はみんなに俺達の音楽を聴いてもらいたいんです!」
「そうか……。わかった。でも他のメンバーが僕の目に留まるとは限らないよ」
「お言葉ですが、それはありませんよ。実際に観て頂ければわかります。俺達は4人で1つですから!」
リュウは自信満々に言い切った。