プライダル・リミット
「フッ。プロ相手に言ってくれるねぇ。嫌いじゃないよ、そういうの。じゃあ、来月の12日でどうかな? 年内はその日くらいしかスケジュール空いてないんだよ。僕もヒマじゃないんでね」
「12日ですか……。でしたら中路さんがこちらにいらして下さい。その日は俺達のライブがあるんです」
 このチャンスを逃すわけにはいかない。リュウはとっさに嘘をついた。“4人の音”はもう完成している。初ライブのいいキッカケにもなるし、なにより、ステージで真実《ほんとう》の自分達を見せつけてやりたかった。
「この中路稔に来いと?」
「はい!」
「フッ。いい度胸してるねぇ。嫌いじゃないよ、そういうの。バンドはライブで真価を問われるからね」
「ありがとうございます!」
「それで、場所は?」
「吉祥寺のスタジオ・レノンです」
「吉祥寺のスタジオ・レノン……? あぁ、マスターのライブハウスか」
「マスターをご存じなんですか?」
「昔ちょっとね……」
「はぁ……」
 リュウも知らなかったマスターの過去。茂木源と中路稔の接点とは? 謎は深まるばかり……。
「それより、君達バンド名は?」
 話題を戻したナカジの質問に対して、リュウはここぞとばかりに声を張り上げて答えた。
「ドアー・オブ・ザ・ドラゴンです!」




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