プライダル・リミット

「それが親父さんとの約束……？」
「約束なんてそんな……。きっと僕が司法試験に落ちて喜んでるに違いないんだ……」
「子供の失敗を喜ぶ親がいるかな？」
「父さんはそういう人だ」
「何かワケがあるのかもしれないぜ？」
「ワケ？」
「じゃあ、なんでお前は東大も司法試験も受験したんだ？」
「それは！　それは僕の意志だ！　もう父さんに縛られるのはたくさんだ！　僕には僕の人生があるんだ！」
「それが答だよ。“我が為す事は我のみぞ知る”それで充分じゃねぇか」
　これだ！　マキオは覚えている。この男の寸鉄人を殺すかのような言葉に思考が一瞬停止させられるかのような感覚をこれまで何度となく得てきたことを――。マキオは胸に迫る思いがした。
「そのリミットもあと３日……」
「あとはお前のプライド次第さ」
　明日から３日間、旧司法試験第二次試験口述試験が始まる――。