プライダル・リミット
「お父さんを助けて死んだ藤真竜は君の友達だよねぇ? 彼はなんであの日、あの時間に、あの場所にいたんだろうねぇ? ただの偶然なのかなぁ? まるで、予め今回の犯行を知っていたかのように……。彼が君に近づいたことも、彼が君のお父さんを助けたことも、ただの偶然なのかなぁ?」
「何が……言いたいんですか……?」
 マキオは背中越しに問い質した。これ以上追求されたくはないが近藤の迂遠な言い回しへの苛立ちがそうさせた。
「彼、藤真くんには父親がいないらしいね?“この世に生を得るは事を為すにあり”だっけ? 彼が最後のブログで書き込んだ言葉。君のお父さんもよく使うらしいね? お父さんの学校の生徒さんが言ってたよ。これって坂本竜馬の言葉だよね? しかも、藤真竜の“竜”は坂本竜馬の“竜”でもある。事件のことにしても坂本竜馬のことにしても、偶然にしては出来過ぎていると思わないか? そして、君のお兄さんと藤真くんは奇しくも同じ年に生まれた。かたや理事長の息子で裕福な家庭に育った高学歴のエリート教師、かたや家族は実の母と血の繋がらない父と妹で複雑な家庭に育った高卒の売れないミュージシャン。君だってそうだろ? 現役東大生で司法試験受験生。家庭環境でこうも違うもんかねぇ。運命なんて皮肉なもんだ……」
「くっ……」
 憤るマキオの心を弄ぶように、遂に近藤は事の核心に触れた。
「もしかして、君達3人て」
“ガチャ、バタン!”
 マキオは近藤の言葉を遮るように家の中に飛び込んだ。




< 177 / 204 >

この作品をシェア

pagetop