プライダル・リミット
〈キョーダイ〉
 聞きたくない。他人のプライベートをエサに私欲を肥やすような奴の、それこそ他人で何の関係もない人間の口から、無神経にも悪意に満ちた言葉で、聞きたくない。
 マキオは気になっていた。あの男の憶測は自分の憶測でもある。それは認める。が、しかし、近藤のあの言葉――
『彼はなんであの日、あの時間に、あの場所にいたんだろうねぇ? ただの偶然なのかなぁ? まるで、予め今回の犯行を知っていたかのように……』
 あの男の疑問は自分の疑問でもあった。それも否めない。リュウはなぜ、事件の日時と場所を事前に知り得たのか? そこに高円寺での接触と新宿駅での目撃、そして今回の事件とを結ぶ重要な鍵があるはず。解明の糸口が――。マキオは思考を巡らせた。しかし、そもそもの前提が仮定であることなどまったくの思慮外だった。




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