プライダル・リミット
 一気に張り詰める緊張。マキオの着眼点は概ね正しかった。
〈十三番目の使途ジャッジ:2008/11/13/(木)4:03:33
我はメシアの遺志を継ぐ者。
今、お告げは我に返った。
腐敗し教育者を浄化せん者、その使命を果たし時、神と化す。即ち我なり。
ユダの処刑は1年後の今日――
我は祈る。それまでこの感情が風化せんことを……。〉
 キリスト十二使徒になぞらえて自身を十三番目の使途と名乗る容疑者。
「メシア……ヨシュア・メシア……ギリシャ語でイエス・キリスト……」
 マキオは1年前の事件を思い出した。
『本日、午前8時頃、東京都千代田区隼町最高裁判所近くで、通行人を狙った無差別殺人事件が発生しました。容疑者である20代男性は警察の調べに対し“神からのお告げだ。――汝は天上の人間となり、この世を浄化する使命にある。天上の人間となるため、地上の人間を4人殺せ。さもなければ地獄に落ちることになろう――我は神に代わりこの汚れた世界に裁きを下す救世主《メシア》だ”と不可解な言動を繰り返しており……』
「やはり模倣犯か……。ユダとはおそらく父さんのこと。1年後の今日は11月13日……。しかし、犯行に及んだのは10月25日……」
 マキオは“十三番目の使途ジャッジ”の書き込みを探した。〈2008年12月〉をクリックし、スクロール――
「ない……」
 さらに〈2009年1月〉をクリックし、スクロール――
「あった!」

< 181 / 204 >

この作品をシェア

pagetop