プライダル・リミット
マキオは恐る恐る目を開けてみると、しゃがんだ男が受験票を手にしていた。
「何だこれ? 受験票? 司法試験……。へぇー」
男はマキオの顔を見た。すぐに目を逸らすマキオ。
「なるほど……。ん? おてあらいまきお? 御手洗《おてあらい》!?オマエ変わった名字してんなぁ。御手洗って、便所じゃねぇかよ」
「みたらいです」
マキオは不平そうに言い返すと、男の手から受験票を取り上げた。
「みたらい? “おてあらい”じゃなくて“みたらい”って読むのか。おてあらいじゃなくて」
「おてあらいおてあらいって」
マキオはボソッと呟いた。
「アァ? 今なんか言ったか? 言ったな、言ったよなぁ? オイ!」
「い、いや、何も……」
「まあいいや。お前も頑張れよ」
男は立ち上がりそう言い残すと、また駅の方へと歩いていった。男の豹変ぶりにマキオは呆然としながらも立ち上がり右足を一歩前に進めた。
(オマエも?)
マキオは振り返った。
(バンド……マン? しかし時代錯誤だな。今時革ジャンに革パンて、バブルかよ。ベタベタだな。ベタロック野郎……。オマエも? 夢見てんじゃねぇよ、凡人が。僕はアンタとは違うんだよ)
マキオは男の姿が見えなくなるまでその背中を目で追っていた。
「何だこれ? 受験票? 司法試験……。へぇー」
男はマキオの顔を見た。すぐに目を逸らすマキオ。
「なるほど……。ん? おてあらいまきお? 御手洗《おてあらい》!?オマエ変わった名字してんなぁ。御手洗って、便所じゃねぇかよ」
「みたらいです」
マキオは不平そうに言い返すと、男の手から受験票を取り上げた。
「みたらい? “おてあらい”じゃなくて“みたらい”って読むのか。おてあらいじゃなくて」
「おてあらいおてあらいって」
マキオはボソッと呟いた。
「アァ? 今なんか言ったか? 言ったな、言ったよなぁ? オイ!」
「い、いや、何も……」
「まあいいや。お前も頑張れよ」
男は立ち上がりそう言い残すと、また駅の方へと歩いていった。男の豹変ぶりにマキオは呆然としながらも立ち上がり右足を一歩前に進めた。
(オマエも?)
マキオは振り返った。
(バンド……マン? しかし時代錯誤だな。今時革ジャンに革パンて、バブルかよ。ベタベタだな。ベタロック野郎……。オマエも? 夢見てんじゃねぇよ、凡人が。僕はアンタとは違うんだよ)
マキオは男の姿が見えなくなるまでその背中を目で追っていた。