プライダル・リミット
 マキオには5歳年上の兄がいる。出来の良い兄と出来の悪い弟、よくある話だ。この兄弟においては少しその水準が高すぎるのかもしれないが……。兄は父の期待通り文武両道、父が理事長を務める私立高校の教壇に立つ、いわば自慢の息子だ。成績は常にトップクラス、高校の頃に所属していたサッカー部では全国大会に出場し、プロからスカウトされたほど。さらに生徒会長、サッカー部キャプテン、数々の賞、周囲からの信頼も厚く、人望のある人物だ。親から期待され、見事にそれに応える、絵に描いたように出来た子であることだろう。父はそんな兄とマキオをことあるごとに比較し罵倒したが、マキオには一つだけ兄に勝るものがあった。テストの点数だ。当然テストの点数も比べられた。高校1年1学期の期末テストの点数は兄の高校1年1学期当時の期末テストの点数とを、という具合に。マキオはそれをことごとく上回って見せたが、それでも父から褒められることはなかった。100点を取っても、だ。
 

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