プライダル・リミット
「そこの席に座るか」
 マキオは男に言われるまま席に着くと店内を見渡した。数名の客とウエイトレスが一人。BGMはザ・ビートルズ。
「どうよ? 結構イイ店だろ?」
「は、はい」
「ところでお前歳いくつ?」
「20歳《ハタチ》です」
「お前さぁ、その敬語やめない? 堅苦しいのはどうも性に合わねぇんだよな。歳の差なんてそんなの関係ねぇべ」
「でも……」
「いいんだよ。友達《ツレ》っつうのはそういうもんなんだよ。これからは敬語禁止な。今度使ったら半殺しだかんな」
「ツレ?」
「友達ってことだよ」
(友達? 僕、コイツと友達なの? 友達ってそんな一方的に決めつけられるものなの? まだ僕はコイツのこと何も知らないし、コイツだって僕のこと何も知らないじゃないか)
「でも、まだアナタのこと何も知らないですし……」
「理屈じゃねぇんだよ。フィーリングよ」
「はぁ……」
(フィーリングだったら余計友達になれないだろ!)
「まあ確かにまだ名前も言ってなかったな。俺の名前は……」






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