プライダル・リミット
「あらやだ」
 男の自己紹介をニューハーフの一声が遮った。
「どうしたのマスター?」
「レタスを切らしちゃってたのよ。リュウちゃん買ってきてくれる?」
「えぇ!? なんで俺が買いに行くんだよ。俺客だぜ? 客に買いに行かせるかよフツー」
「文句言わないの。アンタの口に入るんだから。ついでに最新号の音楽雑誌もね」
「アァン!? 雑誌は俺の口には入んねぇぞ」
「いいじゃない。いつもウチのスタジオでタ・ダ・で・読んでるんだから」
「わかったよ。ったく、客使いが荒い店だなぁここは」
「じゃあお願いね。あと領収書も忘れないでよ」
「はいはい。んじゃ、ちょっくら行ってくらぁ」
 男はマダムから1万円札を受け取るとマキオに軽く手を上げて店を出ていった。
(リュウ……。アイツ、リュウって呼ばれてるのか)


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