プライダル・リミット
 マキオはマダムの話に引き込まれていた。
(プライド……自尊心か誇りか、名誉……栄光か虚無か、そして人生における正解と不正解。どれも自分のCPU《頭の中》で計算された答により他方をDelete《削除》し、残った他方を正答としてきた。それが価値観。二者択一、あるいは多肢択一。幾度となく迫られる無限に広がる選択肢。その選択によって形成される人格。それによって抹消される選択肢もある。つまり自分とは唯一無二であり、他人とはそれ以外。結論は当然だがそういうことか? そこに至るまでの過程を知れということか? マダムの言う“理解”とはそういうことなのか? 道は一つじゃない。他の道もまた一つ……)
 マダムの真意はわからないが、マキオがその思考力によりそこに辿り着くには充分だった。醸し出される雰囲気と意味深長な言葉。説得力? 圧倒的? 威圧感? 父のそれとは違い、マダムには優しさと温かさがあった。
「僕は……」 



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