プライダル・リミット
「おぉ、知ってるじゃん。じゃあ、ミスチルの曲だったら何?」
 マキオがそういった音楽に疎いこともまた事実。耳にしたことはあるが曲名がわからない。マキオはそれを悟られない回答を探した。
「一番売れた曲……かな」
「一番売れた曲……? “Tomorrownever knows”か」
「そうそう、それそれ」
 マキオはホッとした。
「あれはイイ曲だよなぁ」
 リュウはそう言うとギターを弾きながらミスターチルドレンの“Tomorrow never knows”を歌い始めた。この曲が発売された当時、まだ小学1年生だったマキオには「なんとなく……」程度の思いしかなかったが、その詞から「生きる」ということに対する葛藤とそれを受け入れながらも心のままに「生きる」ということ――主観的無情と有情――に客観的慈悲を感じた。もう自分は「すれ違う少年」ではない……?


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