プライダル・リミット
 リュウは計10曲を歌い切るとギターをハードケースにしまいながらマキオに訊いた。
「どの曲がよかった?」
(えっ!? ほとんど聴いてなかった。2曲目からは知りもしないし。だいたい何曲やったのかも覚えてないよ)
「ちなみにミスチル以外は俺のオリジナルなんだ」
(わかるか! 自己顕示欲強すぎだろ)
 それでも、きっと自分の曲を褒めてもらいたいんだろうことはマキオにも容易に想像できた。
「最後の曲かな」
「あぁ“ライフ”ね。あれは新曲なんだ……。で、どんなところが?」
 マキオは困った。世俗的な音楽を評するボキャブラリーなど持ち合わせていない。それでも、もっともらしい、いや、正直に感じたことを答えた。
「声がメロディーに乗って心に響いてくるような、心情が伝わってくるような……」
「あの曲は俺の音楽人生最後の曲になるかもしれない、そういう想いで書いた曲なんだ」
「最後?」




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