プライダル・リミット

　現在、マキオの視界にいるウエイトレスは１人。もちろんリンではないがカナでもない。先週店に来た時にはいなかったウエイトレスだ。ならばもう１人いるはず……。リンか？　カナか？　それとも……
「カナちゃぁん、マキオちゃんにブルマン出してちょーだい。それとお冷も」
　……。返事がない。
「あのコったら……ごめんなさいね、愛想のないコで」
「い、いえ」
　まるで父、いや母親のようだと思いながらマキオは苦笑いで返した。
　誤算？　いや、まだ可能性はある。午後５時４１分現在、リンの出勤確率は５０％。
（ま、まあいい。あの女《カナ》が早番でリンちゃんが遅番なら御の字だ）
“ガチャッ”
　マキオの目の前にコーヒーが乱暴に置かれた。驚きと怒りで顔を見上げたマキオは「ふっざけるなよ！　僕は客だぞ！　なんなんだその態度は！　ようしわかった。こうなったら数学のテストで勝負だ!!」って言ってやりたかった。
「アンタ、こないだ駅で私にぶつかったわよねぇ？」
「えっ!?」
（き、気づいてたのか）