プライダル・リミット
 カナの先制パンチ。マキオは意表を突かれた。
「あれは痛かったなぁ」
「ちゃんと謝ったじゃないか」
「スミマセンで済んだら警察も政治家も弁護士もいらないのよ」
(このセリフ、どっかで……リュウ……! やっぱり兄妹だ、この2人。マダムの言うとおりだよ、よく似てる。サディスティックなところとかサディスティックなところとかサディスティックなところが!)
「なに黙ってんのよ。リンから聞いたけど、アンタ弁護士目指してんだってね? アキバくん」
「ア、アキ!?」
 マキオは怯んだ。
「違うの? だって、美少女フィギュアとか持ってたじゃない。アキバ系なんでしょ?」
 カナのアッパーカット。マキオは見下されている気がした。自分の価値観を否定された気がした。「馬鹿にするな」他人の自尊心に土足で踏み入り、あっさりと傷つけるこの女を許すわけにはいかない。もはや黙っているわけにはいかない。
「長期好景気といわれながら消費が低迷する中、オタクの経済効果は4,110億円ともいわれているんだ。今やオタクが日本の経済の一角を担っていると言っても……」
「でも、オタクなんでしょ」
「なっ……」



< 77 / 204 >

この作品をシェア

pagetop