プライダル・リミット

　それは先週の金曜日――
　１６時４４分。店の電話が鳴る。
「はい、カフェ・レノンです」
「もしもし。ヒビキさん？　カナですけど、今日遅れそうなんです。てか遅れます。授業の課題が終わんなくて、まだ学校なんですよぉ。六時には行けると思うんですけど」
「そう、わかったわ。それまで私がいるから心配しなくていいわよ。マダムには私から言っておくから」
「すみません。よろしくお願いします」
「Ａｌｌ　ｒｉｇｈｔ．Ｂｙｅ」
　１６時４５分。マダムがカナの遅刻を知る。
「マダムぅ。カナが学校で課題が終わらないから１時間ほど遅れるって。六時までなら私がいるわよ」
「あら、そうなの？　でも大丈夫？　今日は夜のお仕事がある日じゃない」
「大丈夫よ。直行すれば間に合うわ」
「悪いわね。アナタには頼ってばかりで」
「お互い様よ。まだまだマダムには頼らせてもらうんですから」
「早く新しい旦那様でも見つけてそっちに頼ってほしいものね」
「私はこれからもずっとメイと２人で生きていくって決めたの」
「母は強しね」