プライダル・リミット
 では、なぜ今日、リンではなくカナが出勤していたのか?
 またも先週の金曜日――
 バイト帰りのカナとリン。
「あ~、なんかいつもより疲れた」
「はは」
「今日はごめんね、遅刻しちゃって」
「ううん、いいよ」
「あと、バカ兄貴のことも」
「カナのお兄さんてカッコイイよね。男らしいっていうか、ワイルドっていうか」
「冗談でしょ? 野蛮なだけよ。野蛮で単細胞。ミドリムシでゾウリムシでバクテリア」
「そこまで言わなくても……。でも、ホントは優しそうじゃない? 妹想いってカンジ」
「どこがよ! リンも見てたでしょ? あれのどこが優しいのよ。どこが妹想いなのよ」
「そうかなぁ?」
「そうよ! リンは男を見る目がないのよ。おまけに鈍感だし。だからいつまでたっても彼氏ができないのよ」
「しゅん……」
「あっ、ごめん。ごめんね。冗談よ。ジョーダン」
「ホントに?」
「ホントに」
「ホントにホントに?」
「ホントにホントに」
「よかった」
「ふぅ……」
「それにしても、似てないよね」
「えっ?」




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