プライダル・リミット
 一方、そうとは知らずにリンが来ることを信じて待つマキオ。午後6時が刻一刻と迫る。午後5時59分57秒、58、59……
“カランカラ~ン”
 マキオとカナは同時に振り向いた。リンじゃない! 中年のサラリーマンだ。
「いらっしゃいませぇ」
 カナが猫撫で声で出迎える。さっきまでとは正反対の態度がマキオを余計に苛立たせた。
(なんだこの変貌ぶり。フリーザの最終形態か! そしてこの温度差。バスラとボストーク基地か!)
 誤算! そう、もう可能性はない。午後6時00分現在、リンの出勤確率は0%。ていうか、ハナっから0%だったのだ。マキオの推測は憶測に終わり、とんだ皮算用だったわけである。
(統計から結果を出すにはまだ情報が足りない……)
 建設的な思考がマキオを落ち着かせた。しかし、その沈着を脅かすカナの一言にマキオは冷静でいられなくなる。
「ほらね。来ないでしょ?」
「……」
 また話し掛けてきたカナをマキオは相手にしないことにした。マキオに無視されたカナはムッとして……
「言っとくけどリンに入れ込んでもムダよ。あのコ、彼氏いるから」
「!?」


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