プライダル・リミット
「そ、そうなの?」
 マキオは知らないフリをした。
「アイツがこのことを知っているかどうかはわからなけど……私は知ってた……ずっと前から……」
「いつから? いつから知ってたの?」
「中学の時、理科の授業で複対立遺伝の勉強をして……。最初は興味本位だった。両親に血液型を聞いて確かめてみたかっただけなのに……。結果を見て呆然としたわ。言葉も出ないくらい。A型の父とO型の母にO型のアイツが生まれることがあってもB型の私が生まれることはないもの! ショックだった……。でもホッとした。アイツと血が繋がっていないことに……」
「そんなことで家族じゃなくなっちゃうの?」
「そんなこと? 私にとっては“そんなこと”じゃないわ!」
「でも、法的には養子縁組をしていれば親子関係は認められるわけだし……」
「はあ!? 法的? アンタそれ本気で言ってんの? そんなの国が勝手に決めたことじゃない! 人には感情ってモノがあるのよ! 形式だけの家族なんて本当の家族とはいえないわよ!」
「じゃあ、カナちゃんは今まで両親に対してもリュウに対しても、家族としてなんの感情もなかったの? 血が繋がってないってわかった途端に家族じゃなくなっちゃうの?」
「わかってるわよ、そんなこと! 私だって……」
「だったらリュウは“アイツ”なんかじゃなくて“お兄さん”じゃないの?」
「だから……! だからアイツの前では“お兄ちゃん”って呼んでるじゃない!」
「リュウの前だけじゃなくて、今だって。それってまだリュウのことをお兄さんだと認めていないってことじゃないか」
「それは……」






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