好きだよ。

70年前

『好きだよ。バイバイ』



そう言ったのは、確かに覚えている。



もう、分かっていたから。


……天国に自分が逝ってしまうことくらい。



だから、伝えたかったんだ。


あゆみに。


俺の、幼いころから変わらないたったひとつの気持ちを。





「っ……?」



目を開くと、真っ白だった。


寝ている地面は、怖くなるくらいやわらかい。


今まで、味わったことのない感覚が、俺を襲った。


一瞬で分かった。



天国なのだと。



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