聖夜の奇跡
少しずつ降る雪が私の体を冷やしていく。
「風邪、ひいちゃいますよ。」
透明なビニール傘を私にさしながら言った。
「放っといてください。」
冷たくそう言い、私は背を向けた。
「そうはいかないでしょ。」
「関係ないでしょ!」
私はその人の方を向いてそう言った。
その人……彼は怒ることもせず、ただ優しい口調で言った。
「偶然会った。それだけで奇跡なんですよ。だから、関係はそこから生まれるんです。」
「……意味分かんない。」
「つまり、あなたと僕は関係ない訳じゃない。だから、心配するんです。放っといてなどおけません。」
そう言って彼は傘を差し出した。
穏やかな笑顔で、敬語が口癖な人だった。
変な奴。
それが第一印象だ。