聖夜の奇跡
02 君を想うトキ
「おーはよ。」
親友のマナと玄関で会う。
「おはよ。」
「今日0%だよ?」
マナは私の傘を指さして言う。
0%とは、降水確率のことだ。
「んー、知ってる。」
この傘は、私の傘じゃない。
あのクリスマスの日、彼から借りた傘なのだ。
あの日以来、何度も彼に会った場所に行く。
でも、彼と会うことは二度となく。
季節は夏を迎えようとしていた。
「律儀と言うか何と言うか……。」
「別にいいでしょ。」
傘を返すことなど、どうだっていいのだ。
ただ、多分私は、傘を理由に、彼に会いたいだけなんだと思う。