『はな』と『つぼみ』
準備を済まし、寝室の扉を開ける。が、一見、葉菜の姿がない。

その代理を務めるかのように、昨日の夕飯の形跡がそのままテーブルの上に残されていた。

俺が投げ付けた箸もそのまま床に横たわっていた。

今度という今度は、愛想を尽かれてしまったか…。と、苦虫を噛み潰したような顔で緩いままのネクタイを締め直した。

ただ、葉菜のお気に入りである、フルーツ柄の肩掛け鞄がそのまま居間にあることから、すぐに戻ってくるだろうと解釈した。

その時に謝ればいいだろうと、アパートを出て出勤した。

あの時、玄関の扉を開けようとした時、微かに物音が聞こえた気がしたのは、気のせいだったんだろうか…。
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