『はな』と『つぼみ』
「おう!矢崎。」
オフィスに入ると、湯月に声を掛けられた。
「余裕だな〜お前。そんなんで、今月クリアできんの?」
湯月はそういって、俺のチームのデスクが並んでいる先にあるホワイトボードを親指で指した。

ホワイトボードにはアポインターの名前が縦に表示してある。その横に一日の成績やスローガンなどがマジックで書かれている。

要するに個人のノルマ表だ。

「お前こそ、先月達成してるくせに何してんだよ。」

「俺?俺はね、君とは違うんだよ。アポインターとサブリーダーを育成するのも俺の仕事だからね。」

湯月は得意げにそう言って見せると、自分のチームエリアの方へ踵を返して行った。

俺はそんな湯月の背中に「よく言うよ」と投げ付けてやった。
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