『はな』と『つぼみ』
テーブルの上にはおろしハンバーグを中心に料理が揃い、食事が始まった。

葉菜は俺の健康を考え、栄養バランスが整った料理を作る。

以前の俺は、そんな葉菜の料理が大好きだった。バランスも味も良く、自分の為に作られる料理が母親以外にいなかったからだ。

今はそんな気遣いにすら苛立ちを覚える。

「龍ちゃん、明日ね、行きたいところがあるんだ!」

「明日は俺、仕事」

さっきまで笑顔だった葉菜は少しだけ曇らせて「そっか…」と言った。
そして、気を取り戻したかのように笑顔でまた話しはじめた。

「最近、龍ちゃん元気ないから、久々に出掛けたかったんだけど、仕方ないね」

俺はそれに対し、無言のままハンバーグを口に突っ込んだ。

「龍ちゃん、明日…」

葉菜の柔らかく細い声が俺の苛立ちを増幅させられ、何かがキレた。

「うるっせーよ!黙ってろよ!」

俺は言い終わるか終わらないかぐらいで持っていた箸を壁に投げ付けた。

葉菜は驚きのあまりに大きな目を一回り大きくさせ、俺を見ていた。その目から涙が静かに流れ出た。
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