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序章 緋色の空
さてその時、高らかにラッパの音が鳴り響いた。

地上に溢れた、強欲にまみれし獣たちが何事かと天を仰ぎ見た。
哀れなる者たちを煽動していた悪魔たちは、驚きに首を竦める。
粛清と言う名の刃を振るい続けた多くの神々が、畏れおののいた。

風も水も大地も火も光も闇も。
全ての生きとし生けるもの、天に在りし地に在りし、天と地の狭間に在りしものすべからく、音の響き出でたる処へ向いた。

神も悪魔も人を全てをも飲み込んで、世界はまどろむ。


全てのものが争いを瞬間的に忘れたのを見届けると、神の神たるアグルテイトは雷の如く叫んで言った。

「幸いなるかな、盲目たる人の子よ。」

争いの発端は些細な事であることを神の神たる為、アグルテイトは知っていた。
人が起こした些末な争いに神々と悪魔たちが便乗し、アグルテイトの創りし世界を焼き、砕き、壊した事も全て見ていた。

それがいかに愚かで、哀しい事か気付く事を望み。

しかし、誰一人として気付かず、世界は崩壊しようとしていた。
争いは争いを呼び、憎しみは暴力を持って報復とされ。

先んじるように、人は進化し、科学化学を発展させ。
そして、小さき神々からの御業、悪魔の知識を用いていった。



楽園は見る影もなくなり、世界は血なまぐさい混沌たるものとなっていた。
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