W-Children
…考えて…みるけれど。

一頻り唸り、百面相さながら苦悩した末。
…悲しいかな、何も浮かばず。
脳内で、ミニマム化した性格破綻男が、鼻で笑って首を左右に振るのを追い出すように首が取れんばかりに振り払う。

妄想、もとい想像の中でさえふてぶてしい上に憎々しい男だ。

「…お前の世話をする方が、あのクサレ師匠の面倒みるより絶対苦じゃないだろうし。」

むしろ楽しい。
どう天秤にかけたって、この仔犬の愛くるしさを差し引いたって。
事実をねじ曲げるのは不可能だ。
それが、この可愛い物好きフィルターを通せばなおのこと。

決心なんて、決めてしまえば何のその。

いざとなれば張り倒してでも(出来るか否かは置いといて、心よ心っ)、極悪非道冷血鉄面皮性格破綻社会不適合者の烙印を欲しいがままにする師匠という名の暴君から守ってみせるっ!

「となると、お前には名前がいるね。」

名は、繋がり。
愛しいと思うなら、つけらいでか。

「ん~…。」

唸る少女を信頼の眼差しが射抜く。
…下手な名前は、付けられない…っ!

「…イル。ラウ。ティタ…。」

犬に付けておかしくなく、それでいてエレガントかつ勇猛果敢さを窺わせながらも清楚で繊細でしっくりくる名前を…っ!
と、思いつつ、あまりそうでない名前しか浮かばないのがまた悲しいところだ。
自分のネーミングセンスを、心なし、いや、かなり恨みたい。

「フィル。」

告げた刹那、仔犬が取れんばかりに尻尾をふった。

「フィル、がいいの?」

問えば、クリクリの眼をキラキラ輝かせながらキャウっと返事する。
その瞬間この仔犬の名は決まった。

「じゃぁ、お前はフィルね。私はメアン。メアン・トリッチ・リーノ。」

少女、メアンはフィルを抱き上げ、その鼻頭にチュッとキスをする。
応えるように、フィルはメアンの頬を舐めた。

「よろしくね、フィル。」

仔犬特有の暖かさが、メアンの腕の中でおとなしく寛ぐ。
…それはこれから起こる波乱を少しでも慰めるようであったが、この時のメアンにそれを察知する術は無かったのだった。

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