W-Children
ここが人通りの多い街中なら、彼女はイタイものを見るような白い目に晒されただろう。

だが、幸いにもここは人里離れた山道だったりしたから、人目どころか気配もない。

「鬼畜っ!超ドS男めぇえぇっ!」

放たれる言葉が罵声でさえなければ、それはとても伸びやかで澄んだ声だった。
高すぎず、とはいえハスキーでもない。
多少、子供っぽくはあるが。

口汚く罵る物体の正体は、小柄な少女。
銅色の髪を首の当たりで切り揃え、時折吹く風に揺らされている。
おそらく、この場にいない師匠を睨み付けているのであろう大きな瞳は、琥珀色に輝き。
先ほどから口汚く罵る唇は淡い桜色で。
健康的に焼けた肌は彼女の快活な性格、可愛らしさを彩る。

彼女は所謂、美少女だ。

…ただ。

「ぉ重いぃ~っ!う・で・が、モゲる~…」

背中には身の丈とほぼ互角で、幅は二倍強のリュックを背負い、両腕にはそれぞれ3・4袋をぶら下げていた。
しかも、リュックには明らかに入りきらなかったのだろう、口はなんとか結ばれて溢れ落ちる事はないものの、隙間から幾つか棒状のものが飛び出し突き破らんばかりになっている。

後ろから見れば、異様な荷物の塊が、うぞうぞと動いているようにしか見えない。
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