W-Children
その事に真実気付かないままに文句は続くが。
やがて不毛だと思い到って、盛大なるため息を吐いた。

「何で私、あんなのの弟子、やってんだろ」

正真正銘の本音に、心なしか荷物の重量が増した気がする。

いやいやいや。

思い返せばヤツのもとに行ってかれこれ10年。
というか。

「拾われて10年か。」

正式に弟子認定をされたわけじゃない。
気付いたら術のなんたるかを学び、師匠と呼び。

…いや待て。

それより遥かに、小間使い扱いのが圧倒的に占める気が…。
考えれば考えるほどに、寂しくなるのはナンデデショウ。

そんなこんなことを考えつつ歩く視界に、何か黒いものが過った。

「お?」

ふわふわの、コロッコロ。

「おお~?」

歓喜を覚えた声に反応するように、黒い塊が足を止めてつぶらな瞳を向けてきた。

と。

あたかも探し物を見付けたかのように、一目散に駆けてくる。

それを荷物を持ったままの腕で抱き止めた。


バキン。


…さっき、硝子物の荷物から何やら嫌な音がした気がしたが、この際聞かなかったフリだ。
片腕ずつ荷物を地面に下ろし、愛くるしい様態を見せられるがままに、抱きしめる。

「子犬~。う~。めんこい~。」
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