W-Children
艶やかな毛並み、しなやかな質感。

何より、会って間もないにも関わらず、全身で信頼を見せてくれる。
それが嬉しくて、くすぐったくて。
温かくて、柔らかくて、優しい。
…まるで、ずっと昔から知っているような。
そんな錯覚にとらわれながらも、抱きしめた愛しさが今にも消えそうに思えて、全身で存在を確かめる。

その頬を、宥めるように舐められ、現状を思い出した。

今はお使いの帰り。
自分はしがない見習いで。
帰る先に待ち構えるは、師匠と言う名の傍若無人超絶我儘性格破綻男っ!


「…ごめんね、連れて帰れないんだ。連れて帰りたいのは山々なんだけど、ね。」

そっと地面に下ろしつつも、もし、連れて帰った事を想像してみる。

正々堂々連れて帰る。

良い実験材料だと、ラボと言う名の地獄に連行される。

「いっや~!そんなのはぁっ!」

それは避けたいっ!
というか、断固拒否っ!

じゃぁこっそり…

感覚の鋭い、しかも屈指の上級魔女に隠し通せるわけがない。

結果。

良い材料が落ちていたと…以下略。

「ダメだダメだダメだぁあっ!」
何度、脳内シュミレーションをしてみても、こっそり飼おうとすると悲惨な末路にしか辿り着けない。

「ぁあ、どうしよう。」

連れて帰りたい。
すごく、離れ難い。
なぜだかはまるっきり分からないけど。
< 9 / 14 >

この作品をシェア

pagetop