4748日後のクリスマス
「ごめん…」
「わかったならいーよ。
早く帰ろ、おばさん心配してる」
キョーちゃんは片手をあたしの頭にのせ、ポンポンと軽く叩いた。
――小さい頃から、この仕草はキョーちゃんの癖だった。
だからあたしは、小さい頃からこの仕草が好きだった。
「キョーちゃん、クリスマスも仕事なの?」
クリスマスの約束を覚えているのか気になっていたあたしは、そう聞いてみた。
「あー一応その日から休みに入るけど、まだわかんね」
キョーちゃんは大して気にもとめずに、淡々と答えた。
もしかして、本当に忘れてるの?
「クリスマスに用事とかさ、ないの?」
回りくどい言い方だったけど、でも消極的なあたしはそう聞いた。
「あー、ねーよ。今は仕事一筋になんねーと」
……やっぱり、キョーちゃんは忘れてる。
キョーちゃんにとって、あれはどうでもいい約束だったのかな。
「つかまじ寒ぃーなー」
キョーちゃんはそう呟きながらポケットに手を突っ込んだ。
丁度そのとき、ピロロロー…と、携帯の着信音が鳴った。