4748日後のクリスマス


「どーだっていいわけないよ」

「…何で美菜が泣くんだよ」


泣くと言っても、泣き叫ぶとかじゃなくて、ただ美菜は、静かに涙を流しているだけだった。


「キョーちゃんのかわりに泣いてるんだよ。

キョーちゃん、泣きたいときは泣いていいんだよ」



そう言った美菜の声があまりにも優しかったから、止まっていた涙が一気に溢れた。



もう、絶対美菜を泣かせたくないと思った。


美菜は俺よりもずっと小さかったから、俺が守ってやらなきゃダメなんだと思った。




そしてそれから少し経った美菜の六回目の誕生日、俺は美菜に約束をした。



『13年後の今日、もし美菜が来てくれるなら、この場所で会おう。

約束だから』



その約束は、俺なりのプロポーズだったんだ。


その時の俺は、高校を卒業したら結婚できるのだと、そう思っていたから。



もう、大切な人は失いたくないと、小さいながらにもそう思っていたんだ。



だから、ずっと美菜を守ろうと思って、その約束をした。



< 36 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop