4748日後のクリスマス
「どーだっていいわけないよ」
「…何で美菜が泣くんだよ」
泣くと言っても、泣き叫ぶとかじゃなくて、ただ美菜は、静かに涙を流しているだけだった。
「キョーちゃんのかわりに泣いてるんだよ。
キョーちゃん、泣きたいときは泣いていいんだよ」
そう言った美菜の声があまりにも優しかったから、止まっていた涙が一気に溢れた。
もう、絶対美菜を泣かせたくないと思った。
美菜は俺よりもずっと小さかったから、俺が守ってやらなきゃダメなんだと思った。
そしてそれから少し経った美菜の六回目の誕生日、俺は美菜に約束をした。
『13年後の今日、もし美菜が来てくれるなら、この場所で会おう。
約束だから』
その約束は、俺なりのプロポーズだったんだ。
その時の俺は、高校を卒業したら結婚できるのだと、そう思っていたから。
もう、大切な人は失いたくないと、小さいながらにもそう思っていたんだ。
だから、ずっと美菜を守ろうと思って、その約束をした。