4748日後のクリスマス
その約束を忘れるなんてことは一瞬もなかったし、
美菜も覚えているんだと思っていた。
だけどそれが思い違いだと感じたのは、それから12年後、約束まで後1年という時だった。
「あたし、東京の大学に行くことにしたんだ」
突然の美菜の言葉に、俺の頭はついていくことができなくて、美菜は、もうあの約束を忘れたんだと、そう思った。
美菜の笑顔がどこか切なそうだったことなんて、全く気が付かなかった。
「…へぇ」
美菜に返した返事は、母さんに離婚のことを言われたあの日と同じように、ひどく冷たい声だった。
あの日、父さんを失ったと思ったように、
美菜も失ったと思ったんだ。
美菜が東京に行く日は、仕事を口実にして見送りには行かなかった。