4748日後のクリスマス



「あ、中野くん、ここだよ」


街の大通りを車で走る中、斉藤さんは目的の場所を見つけたようで、その場所を指差した。

そこは大き過ぎるわけもなく、かといって小さ過ぎるわけでもなく、至って普通な大きさのジュエリーショップだった。

駐車場に車を止めて店の中に入ると、客はほとんどが女。
男なんて、カップルで来たのだろう、数人しかいない。

…うわ、初めてジュエリーショップに入った。


恥ずかしい気持ちを抑えながら、俺は自然に俯き、斉藤さんの後を追う。


「美菜ちゃんって、どんな感じの子なの?」

「え」


突然俺の方を振り向いて言う斉藤さんの言葉に、俺は咄嗟に戸惑いの声を漏らしていた。



「どんな感じっつっても…」


「ほら、指輪も色々あるから。何色がいいとか、形とか」


成程。
そういうことから探していけばいいのか。



「美菜って色白なんすよ。そんでピンクとか白が似合いますね」

「なんとなくわかるかも。可愛いんだね、美菜ちゃん」


ガラス越しに指輪を眺めながら、斎藤さんは顔を緩ませて笑った。


< 56 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop