4748日後のクリスマス


「ねぇ、これなんてどう?」


そう言って斉藤さんが指差したのは、小さなピンクの宝石が付いていた。
宝石の名前はよくわからないけど。

斉藤さんはさすが大人の女性、という感じで、斉藤さんが選ぶのはかなりいいセンスのものだった。

だけど、美菜がはめるには、少し合わない気がする。


「それはこの冬限定のものでして、とても女性に人気があるんですよ」


確かに、この指輪はいかにも人気がありそうだ。
だけど、美菜に似合うものは、なんていうか、もっとやわらかくて、ふわふわしてて、見てて和む感じのものがいい。


「…あ、これ…。見せてもらってもいいですか」


斉藤さんと店員が話している中、ふと目に入ったのはガラスケースの端にある小さな指輪だった。
それでもどこか雰囲気があって、やわらかくて、ふわふわしてて、見てて和む。
まさに美菜に似合う一品だった。


「あ、はい。かしこまりました」


そう言って店員は急いでその指輪を取り出した。

間近で見てみると、ますます思い通りだ。



「わ、すごい可愛い!」


きっと、これを買う人は少ないのだろう。もしかしたら、これに気付く人だって少ないかもしれない。


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