【番外編集】オレンジ色の奇跡
「本当っ!人手不足で困るわ。ほら、啓輔行くわよっ!」
「離せよ。逃げねえっつんてんだろ」
啓輔はうんざりした様な表情で千紗に連れて行かれた。
そんな二人の背中をしばらく見送った後、二人とは逆方向――目的の教室へと足を運ぶ。
どこを通っても響く黄色い声にはもう慣れた。
とりあえず、笑って答える。これが一番問題が起きない正しい対処法。
そうこうしているうちに、目的の教室に着いた俺は、ドアについている小さめの窓から中を覗く。
そこからちょうど対角線上……正確には後ろ斜め右辺の愛らしい優衣の笑顔が見える。
ちょっと今日は教室に入らないで優衣が俺に気づくのを待とう。
教室の中からでも気づく場所に身体を落ち着かせた俺は、冷たいコンクリの壁に背中を預けた。
いつになっても黄色い声は止みそうになく、その合間にドアが開く音が聞こえ、顔を上げると少し曇った表情の優衣が立っていた。
「神崎先輩………」
不安げな声の優衣の頭をポンポンと撫でてから、優衣の目線に体を合わせる。