夢見月夜に華ト僕<連載中>
「こんにちは」
様子見に、とりあえずは貼り付けた笑顔で対応してみる。
それでもやっぱり、相手の顔は、強張ったままだ。
「アナタ……最近海斗と――」
女の言わんとしていることは、大体わかる。
だけど私は、すっ呆けたフリをして、能天気に首を傾げてみせた。
「……一緒に居る人よね?」
そんな私に女は、目を泳がせながら、遠慮がちに続きを漏らす。
“一緒に住んでますが?”
なんて言ったら、どんな反応をしてくれるだろうか。
想像してみたら、なんだか笑えた。
「海斗と付き合ってるの?」
何も答えない私に、少しだけ強くなった口調で、質問を重ねてきた。
その姿に、私はもっと、女を追い詰めてみたくなる。
「カイと付き合ってるのは、アナタでしょ?」
瞬間、女の表情が凍りついたのがわかった。
私はそれでも、満面の笑顔を崩さない。
「アンタ、バカにしてるの?」
女の控えめだった口調が、急に荒っぽくなって、途端に強気な目に変わった。
吹っ切れた時の人間っていうのは、恐い。
「いえ。別に?」
私は、そんな女を、まだまだもっと怒らせてみたくなって、ワザと挑発的に返してみる。