夢見月夜に華ト僕<連載中>
と言いかけて、私はハッとする。
これは、カイの前だけで存在することが許された、名前だということを。
それ以外での私は、カイがくれたもうひとつの名前。
確か……
「――奈津子、笹原奈津子。よろしくね」
なんて、差し出してみた手は、当然のように冷たく一瞥された後、意味を失った。
「私は結衣。金森結衣」
「そう。結衣ちゃん」
結衣は、慣れなれしい呼び方に、あからさまな嫌悪を示す。
くるくると変幻自在な表情が、面白くて仕方ない。
「じゃあ、後のことはカイから直接聞いてね。ユイちゃん?」
「ちょっ――」
私は、一言と笑顔を置いて、結衣の返事も聞かないまま、背を向ける。
これ以上、小難しい質問を重ねられても、きっと答えられないと思った私は、
早々と、結衣の前から退散することに決めた。
後は、カイにまかせておこう。
……カイは、何て言うんだろう?
私のこと。
私とのこと。
私への想い――