夢見月夜に華ト僕<連載中>
無気力なままで、池の前のベンチに寝そべっていると、
目の前には、果てしない底なしの暗闇が広がっていた。
私は視界一面を覆うそれを、ただじっと見つめ続けた。
私が見ているものが、闇だと気付くことができたのは、
その中にはひとつだけ、いびつな明りを放つものが大きく存在していたから。
闇に気付くためには、光がなくてはいけない。
……邪魔だな。
そう感じた理屈はないけれど、本能的にそう思った。
私は、夜空を汚すこの光を取り除いてしまおうと、奥行きの掴めない闇の中へと手を伸ばす。
けれど、手の平にすっぽりと収まるくせに、掴もうとするたびに
その丸い明りは、するりと私の手の中から逃げていった。
ハッキリしない意識の中で、こんな行動を繰り返している自分は、
やっぱり、きっとどこか、おかしな人間だったのだろう。
全身の感覚が、そう語っている。
クリアな記憶はなくとも、その事実を理解するには十分だった。