夢見月夜に華ト僕<連載中>
最初は甘い言葉と、優しい仕草で、私を抱きしめていた男も、
ほんの幾晩かが過ぎれば、私の存在など目もくれなくなっていた。
目覚めても独り。
寝る時も独り。
テレビを見ても、つまらない。
音楽を聴いても、よくわからない。
寂しいかどうかと聞かれれば、よくわからないけれど
とりあえず、あまり好きにはなれそうもない生活だった。
私は、目覚めてから眠りにつく時までの、ほとんど一日中を、アパートの窓に貼り付いて過ごした。
窓の下の地面を、まばらな外灯と夜空の薄明かりが、
ちょうどいい明るさで、その道を創っている。
暗闇の中に、毎晩浮かび上がる薄黄色の輝き。
欠けたり、消えたり、大きくなったり……
いつの間にか、日々変化してゆくそれの観察が、日課になっていた。
暇を持て余しすぎている私が、外へ出たいと思うのに、そう時間は掛からなかった。
そうなったら、不完全で歪な脳で考えるより、自由な体が、先に動き出す。
一日中締め切られた、淀んだ空気が充満した部屋から一歩出た途端、
ひんやりと冷たい風が、頬をかすめる。
生温い部屋で鈍くなっていた心に染み込んで、研ぎ澄ませてくれた気がした。
飛び出した先は、いつも眺めていた、アパートの向かいにある公園。
カイと出逢った場所だ。
そしてそこで、私はなんとも異空間に堕とされたような、光景を目にした。